日米親
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2091)子の奪い合い紛争には,親対親,親対第三者の類型があり,学説・裁判例は第三者に監護者指定ができるとする。田中通裕「判批」判タ1099号85頁(2002年),棚村政行「祖父母の監護権」判タ1100号148頁(2002年),二宮周平「父母以外の者を監護者に指定することの可否」判タ1119号106頁(2003年),梶村太市「判批」判タ1281号142頁(2009年)参照。ただし本章では,父母間の紛争に限ることとし,対第三者間の問題に関しては深く立ち入らない。また,第Ⅰ部では「子ども」と表記していたが,第Ⅱ部では日本法文上,「子」とされているため,「子」と表すことにする。父母間で争われる子の奪い合い事件は主に,a)婚姻中ではあるが別居中の共同親権者間によるもの,b)離婚後の父母間で親権者と非親権者間による1)が,わが国においては,当事者間の関係によって解決手段の手続ものがあるが異なり,また当事者の権利の有無によって裁判所の判断基準が異なることに特徴がある。子の引渡しを求めるには,①民事訴訟による親権に基づく妨害排除請求,②人身保護請求,③家事事件手続による子の引渡請求が可能である。従来は,①妨害排除請求と②人身保護請求による手続が行われていたが,現代では学説・判例の収束により,上記a),b)のいかなる子の引渡事件においても,その解決手法は主に,③の家事事件手続により行われるようになってきている。父母間の子の引渡請求事件の前提には子の監護紛争が存在しており,子の親権者・監護者指定は,まさに家事事件手続において解決されるからである。③と他との違いは,監護権が処理されることにある。本章ではまず第2節において,これら3つの手続の変遷をたどり,子の引渡請求事件手続の現代における到達点を明らかにする。次に第3節では,家事事件手続における判断基準について検討する。家事事件手続における判断基準は,父母の権利関係に応じて異なっている。それは明白性の基準か,比較衡量の基準かに分かれており,依然として議論の多いところである。さらに,審判前の保全処分が求められる場合には,その判章第1第1節 序子の監護紛争の手続と判断基準

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