日米親
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210断基準も問題となる。これらについて,裁判例の傾向をたどりながら検討していく。第4節では,家事事件で親権者・監護者指定が争われる際に採られる父母の比較衡量基準において考慮される要素について検討する。現在の裁判所における主要な考慮要素が,諸外国の動向を参考にしながら歴史的変遷をたどっていることが分かる。裁判例の傾向を追いながら,現在における到達点をみていくことにしたい。第5節では,高葛藤事件を扱う。裁判例に現れる紛争性の高い事件のなかで,特に今日問題となっているのが,夫婦間のドメスティック・バイオレンス(以下,DVという)と,子に強い拒絶がある事例である。裁判例がこれらの事件にどのように対処してきたのかを分類して検討していく。そして第6節では,子の引渡しの実現について検討する。子の引渡しの強制執行については,直接強制と間接強制の先後関係が問題となっている。また,執行不能後に人身保護請求が用いられることの問題点についても検討していきたい。なおここで,監護という用語について確認しておきたい。監護は,民法766条および民法820条に規定されている。民法820条がいう監護とは,親権の内容をいい,監護権という権利が独立して存在しているわけではない。民法766条は,離婚時に親権者とは別に監護者をおくことを認めており,監護者となった非親権者は,親権中の身上監護権を行使することができるとされている。ただし,監護者,監護権という用語は,必ずしも離婚後の監護状態を指すのではなく,裁判上でも広い意味で用いられており,学説・判例においても監護者と監護権の用語の使い方について,若干の相違がみられる。民法766条は現在,離婚後だけではなく別居中においても監護者を指定するよう類推適用されている。むしろ実務では,離婚後より別居中の監護者指定が主流である。このとき,家庭裁判所から監護者と指定された親に子を監護教育する権限が認められたと解されるが,監護者とならなかった親も,婚姻中の親権を有しているため,非監護権者ではない。そのため,その者は一般に非監護者というが,その権利の内容については議論がある。本章第2節3⑴で検討していく。また,その手続のなかで,父母が婚姻同居中主に子を養育していた親を「主たる監護者」と呼ぶときがある。これは,別居中の監護者指定において裁判所で考慮される一要素であり,同居中に子の養育を主に行っていた親の

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