211ことを指すものであるが,別居時の監護者指定がなされる前であるから,監護者という名は紛らわしい感じもする。「主たる養育者」の方がより適切であると思われるが,本章では,多くの学説・裁判例で用いられている主たる監護者と明記することにする。そして判例では,「監護権者」,「非監護権者」と示されることがしばしばある。「権」がついていることで,法的に権利が認められた状態であるから,その権利がない者とは,離婚後の非親権者を指すことが多いが,ときに第三者を示すこともある。判例は,人身保護請求事件において,「法律上監護権を有しない者」が離婚後の非親権者か第三者かを区別していない。なお,前述したように,民法766条は離婚後に親権者とは別に監護者を指定して監護権だけを分属させることを認めているから,非親権者であっても監護権を有する監護者になりうる場合もある。このとき判例は,監護権者としている例も多い。本章にいう「監護紛争」とは,別居中の監護者指定,離婚時の親権者指定,そして親の親権・監護権という権利をめぐって争われるいくつかの子の引渡請求を含めた事件等を意味する。別居中の監護者指定の紛争途上である場合や,紛争の過程で別居から離婚に移行する場合もあるため,一括して監護紛争ということにする。親権者が非親権者または第三者に対し,親権に基づき子の引渡しを請求できるかについて,民法上の規定はないが,およそ子の監護紛争が生じた当初2),大審院は,幼児の引渡請求より,親権者は子の引渡請求ができると解されは親権行使の妨害排除による請求であることを明らかにしてきた。これは最高裁判所においても踏襲され,地方裁判所において民事訴訟手続によること2)その端緒は,大判明治34・9・21民録7輯8巻25頁であり,大判大正元・12・19民録18輯1087頁,大判大正7・3・30民録24輯609頁に続く。第2節 子の引渡請求手続1 親権に基づく妨害排除請求⑴ 妨害排除請求の変遷
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