財産分与・養育費・婚姻費用に関する証拠収集 1財産分与・養育費・婚姻費用に関する証拠収集⑴ 証拠収集が重要である構造 財産分与・養育費・婚姻費用に関する問題は,(元)夫婦それぞれの財産の状況によって判断されます。しかし,対立している状況では,当事者が財産に関する証拠(資料)を任意に開示しないということがとてもよくあります。そこで,相手方の財産に関する証拠を十分に取得できるかどうかが,結果に大きく影響することが多いです。⑵ 証拠収集の方法 相手方の財産に関する証拠を取得する方法にはいろいろなものがあります。家事調停・審判や訴訟の段階では,裁判所を介した調査,具体的には文書送付嘱託,調査嘱託や,文書提出命令を申し立てることができます。訴訟提起後(係属中)であれば,当事者照会も利用できますが,実効性に問題があります(加藤新太郎ほか編『新基本法コンメンタール 民事訴訟法1』(日本評論社,2018年)473,474頁参照)。 一方,交渉の段階では原則的に,このような裁判所による強力な証拠収集手段を利用することはできません。この点,交渉や調停の段階でも利用できる証拠収集手段として,弁護士会照会(弁護士法23条照会)があります。しかし,照会先の機関が開示に応じない傾向があり,裁判所による手続よりも実効性が劣るといえます。 なお,令和元年に民事執行法が改正され,債権者が債務者の財産を調査する手続が従前よりも大きく拡充されました(令和2年4月1日施行)。具体的にはまず,従前は財産開示手続の申立に必要な債務名義の種類が制限第1証拠(資料)の収集
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