2 第1 証拠(資料)の収集されていましたが,この制限が解消されました(金銭債権の債務名義であれば種類を問わなくなりました)(民事執行法197条1項本文)。また,財産開示手続における債務者の不出頭,宣誓拒絶,陳述拒絶,虚偽陳述についての罰則が,30万円以下の過料から,6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金に強化されました(民事執行法213条1項5号,6号)。さらに,法改正により「第三者からの情報取得手続」が新たに創設されました(民事執行法197条,205〜207条)。債務者の所有する不動産,債務者名義の預貯金,債務者の給与に関する情報(勤務先)について,第三者(登記所,金融機関,市町村など)に対して,裁判所を通して照会できるという制度です。 ただしいずれも「債務名義を取得した債権者」だけが利用できるものです。これは,従前の財産開示手続の制度の目的が,権利実現の実効性を確保するというものであるためです(山本和彦監修『論点解説 令和元年改正民事執行法』(金融財政事情研究会,2020年)16頁)。この点,財産分与・養育費・婚姻費用をこれから定める状況では通常,まだ相手方に対する債務名義を取得していません。そこで,財産分与・養育費・婚姻費用を計算するために民事執行法上の財産開示手続や第三者からの情報取得手続を利用するということはあまり考えられません。あえて言えば,別居中に調停や審判によって婚姻費用が定められた後に,義務者が履行しない(支払わない)という状況で,権利者が財産開示手続や第三者からの情報取得手続を利用し,結果的に義務者の財産の状況を把握できる(その後の財産分与や養育費の計算に用いる)ということはありえます。⑶ 財産に関する証拠(資料)の具体例 相手方の財産(ストック・フロー)を把握するための証拠にはいろいろなものがあります。ア 預貯金・有価証券 預貯金や株式その他の有価証券については,金融機関に対して取引履歴の開示を求めます。ただし現状では,ほとんどのケースで金融機関は「名義人の承諾」がない限り開示には応じないという対応をとっています(民事証拠収集実務研究会編『民事証拠収集-相談から執行まで』(勁草書房,2019年)16頁)。
元のページ ../index.html#32