64 第4 婚姻費用・養育費限を超過した部分の収入は資産形成にあてられているという考え方といえます(松本138頁)。後述の貯蓄率控除方式と同じ考え方が基になっているともいえます。イ 上限頭打ち方式を用いる状況 この上限頭打ち方式を用いるのは,義務者の年収が上限年収を超過する金額が500万円程度までが目安として指摘されています(松本144頁,松本・家月62巻11号83~85頁)。 一方,超過金額が900万円程度であるケースで上限頭打ち方式が用いられた実例もあります。⑵ 上限頭打ち方式(養育費)ア 上限頭打ち方式が用いられる傾向 高額所得者の養育費(の上限金額)については,標準算定方式の公表の際には基準として示すことが避けられています(判タ1111号292頁)。改定標準算定方式の解説ではこのテーマに触れていません。 実務では,高額所得者の養育費について,標準算定表の上限額を用いることが一般的といえます。他の算定方式を用いることは否定される傾向にあります(松本146頁,岡・判タ1209号8頁)。 実際に,平成9年から平成13年の審判の集計において,子1人あたり月額20万円に収まる実例が多かったという指摘もあります(判タ1111号292頁,296頁「資料5」)。 理由としては,婚姻費用と違ってすでに離婚が成立しているため,関係が希薄になっているというようなものと考えられます。明確な理論や統一的な見解があるわけではありません。これに対する,強い批判もあります(判タ1111号292頁)。 まとめると,標準算定表の上限を用いることを原則としつつ,個別的な特殊事情(標準算定方式が前提とする事情との違い)によって修正する,ということになります。個別的な事情の典型例は,海外留学費用のような教育に関係する費用です(松本146頁,岡・判タ1209号8頁)。イ 実 例 実際には高額所得者の養育費の計算において,上限頭打ち方式以外の
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