1 高額所得者の婚姻費用・養育費の計算方法 65算定方式が用いられることもあります。具体的には,有責配偶者からの離婚請求のケースにおいて任意の和解がなされる状況です。このようなケースでは,基本的に離婚請求の相手方(不貞をされた側)が任意に離婚に応じない限り,長期間離婚が実現しない状態にあります。経済面を捉えると,養育費ではなく婚姻費用の支払を長期間継続することを強要される状態といえます(いわゆる婚費地獄)。そこで,婚姻費用に準じる金額の養育費を設定することを条件として,不貞をされた側が離婚に応じるという駆け引きが行われることがよくあるのです。 結果的には,養育費の計算という形式ではありながら,計算の内容は婚姻費用に準じた算定方式を用いるということが起きるのです。 なお,当初から婚姻していない男女間の子(婚外子)の生活費の請求も養育費として計算することになります。➡ケース19,32,47,54⑶ 基礎収入割合修正方式(婚姻費用)ア 基礎収入割合修正方式の考え方 高額所得者の婚姻費用の算定の方法の1つとして,事案に適した基礎収入割合を設定した上で,標準算定方式をそのまま使って計算する,という方法があります。これを,基礎収入割合修正方式といいます。 もともと基礎収入割合は,基礎収入を算出するのを容易にするための方法(指数)です。原理的には,総収入から必要不可欠な出費を控除した残額が基礎収入(可処分の金額)です。必要不可欠な出費の内容は公租公課・職業費・特別経費に分類できます。これらの実際の出費を集計して控除することにより基礎収入を計算するのが原理的な方法です。しかし,この方法によると手間・時間を要するため,年収に応じた必要不可欠な出費の割合(出費金額を控除した残額の割合=基礎収入割合)を用いるのが一般的です。標準算定方式ではこのような考え方がとられています。 つまり,高額所得者の基礎収入割合さえ特定することができれば,標準算定方式をそのまま使うことができるのです。別の言い方をすると,収入が高額であることの影響・特徴を基礎収入割合にのみ反映させるこ
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