資産離
54/66

190  資 料⑵ 高額算定表作成の経緯ア 従来の標準算定表の限界(上限年収) 実務において,養育費・婚姻費用を計算する時に,標準算定表を用いることが普及し,定着しています。標準算定表とは,複数の裁判官によって構成された東京・大阪養育費等研究会が公開し,提唱しているものです(判タ1111号285頁)。標準算定表では,簡易・迅速な算定をするために,簡略化した計算方法(標準算定方式といいます)が用いられています。 この点,標準算定表に掲載されている(義務者の)総収入の上限は,給与所得だと2000万円,事業所得だと1409万円となっています。東京・大阪養育費等研究会の提唱の中には,上限年収を超えるケースについての計算方法は示されていません。イ 改定標準算定表における上限年収 令和元年12月23日に,司法研修所が委嘱した裁判官が作成した改定標準算定表(改定標準算定方式)が公表されました(司法研修所編『養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究』(法曹会,2019年))。この「改定」に関する(高額所得者とは関係ない)一般的な内容については別の項目で説明しています(→「第3 標準算定方式・算定表の「改定」について」57頁参照)。 上限年収については,改定標準算定表も,従来の標準算定表と同じとなっています。正確には,給与所得者の総収入の上限が2000万円であることが維持されています。そして,事業所得者の総収入の上限は,換算の計算内容に変更があったため,従来の1409万円から1567万円に変わっています。 なお,改定標準算定方式・算定表の解説の中では,上限年収を超えるケースについての言及はありません。つまり,現時点においても,上限年収を超えるケースについての扱い(婚姻費用・養育費の計算)については解釈に委ねられているという状況は変わっていないということになるでしょう。

元のページ  ../index.html#54

このブックを見る