第1はじめに2 第1 はじめに創業者又はその一族(以下「創業者等」という。)が支配する会社ないし企業は,一般に,同族(経営)会社,オーナー会社(企業),ファミリー会社(企業)(private holding company ; owner-managed company ; family-owned company)などと呼ばれる。本書でも,こうした創業者等が支配する会社ないし企業を「オーナー会社」などと表現する。本書は,オーナー会社の創業者等から後継者への事業承継に関する具体的な事例を取り上げた上で,その法務上・税務上の問題点について解説するものである。オーナー会社は,株式会社(従前の有限会社を含む。)の形態で組織され,運営されていることが最も一般的であるといえるが,合同会社や合名会社といった持分会社の形態,一般社団法人といった持分のない法人の形態で組織され,運営されていることもある。本書は,基本的には,株式会社の形態で組織されたオーナー会社を念頭に置いた上で,創業者等が保有する株式を後継者に承継させることで事業承継を実現するための具体的な手法について解説することを中心とする。事業承継の前提として,まず重要となるのは後継者である。創業者等の親族に後継者がいる場合には,オーナー会社の株式を親族後継者に承継させ,当該会社の支配権を承継させることで,事業承継を図ることになる(これを「親族内承継」ともいう。その具体的な事例につき,第2章第1「親族内承継」参照)。これに対して,親族に後継者がいない場合には,親族以外の第三者に株式を承継させる,あるいは事業そのものを承継させることで事業承継を図ることになる(これを「親族外承継」ともいう。その具体的な事例につき,第2章第2「親族外承継」参照)。特に,親族外承継の場合,どのように後継者を選定するかということが重要な課題となりうる。取引先や金融機関との関係を維持し,また,従業員との関係を良好なまま保つためには,すでに長年会社に勤務している非親族の従業員,役員等が後継者として適切な場合もある。そのような場合には,非親族の従業員,役員等に事業を承継させることを検討することになる。
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