弁承継
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第1章 論総 従業員,役員等にも後継者がいない場合,完全な外部の第三者に株式を承継させる(あるいは事業そのものを承継させる)ことを検討することになる。いわゆるM&Aである。創業者等としては,誰にも事業を承継させることができない場合には,廃業せざるを得ないことになるが,自ら築き上げてきた事業を廃業するには忍びなく,従業員の雇用を守る必要がある場合も多いと思われる。そこで,身近に後継者がいない場合には,完全な外部の第三者への事業承継も重要な選択肢となる。後継者がいずれの者になるにしても,株式や事業の承継には複数の方法がありうる。その方法については,承継の時期(創業者等の生前の承継か,相続時の承継か),対価の有無(無償による承継か,有償による承継か)によって大きく分けられる。代表的なものとして,①生前贈与,②遺贈,③死因贈与,④売買がある。①は契約(合意)による生前の無償譲渡,②は遺言(単独行為)による相続時の無償譲渡,③は契約による相続時の無償譲渡,④は契約による生前の有償譲渡である。以下では,それぞれの方法に関する法務上及び税務上の留意点について,基礎的なところを述べる。第1 はじめに  3

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