弁承継
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第2承継の方法と法務・税務上の留意点4  第2 承継の方法と法務・税務上の留意点生前贈与による事業承継は,主に,オーナー会社の創業者等が高齢となったことなどを理由に,その生前に,その保有する株式を次世代の後継者に無償で移転することで事業承継を図るものである。これは親族に後継者がいる場合の承継方法として活用されることが多いといえる。この点,生前贈与には,創業者等が自らの意思によって後継者との間で贈与契約を締結することで,その時点で確実に自らが意図する後継者に事業を承継させることができるというメリットがある。これには,以下で述べるとおり,法務上の留意点と税務上の留意点がある。(1)法務上の留意点オーナー会社の場合,創業者等に株式が集中している場合もあれば,親族間で分散している場合もある。すでに分散している場合はもちろん,現在は集中しているとしても将来の相続によって分散する可能性がある場合には,会社の経営が不安定なものとなりうる。留意を要するのは,少数株主であっても,会社法上,経営に関与する各種の手段(帳簿閲覧請求権等)が与えられていることからすれば,事業承継後の安定的な経営という観点から最も望ましいのは,株式を100%後継者に集中するということである。仮に株式を100%集中させることが難しい事情があるとしても,少なくとも株主総会で重要事項を決議するために必要な3分の2以上の議決権を確保することが望ましいといえる。議決権の確保という観点からは,例えば,会社法上の種類株式を活用するということも考えられる(設例8参照)。すなわち,非後継者には,議決権のある普通株式ではなく,議決権制限株式(株主総会での議決権が制限されている株式)を保有させることで,後継者に経営権を集中させることが可能となる。また,将来の相続によって株式が分散するという事態を防止するためにア 株式の集中1 生前贈与による事業承継

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