弁承継
37/56

第2章 論各 相続に伴う贈与税・相続税の納付をいったん猶予した上,その後,猶予を取り消す事情が発生することなく,後継者が亡くなった場合(あるいはさらに次世代の後継者に納税猶予の要件を満たす贈与を行った場合)に猶予税額が免除される制度をいう。中小企業のオーナーが事業承継のために後継者に会社の株式(非上場株式)を贈与した場合,あるいはオーナーが死亡し,その後継者が会社の株式を相続した場合,本来であれば株式の贈与・相続について贈与税・相続税が課税されることになるが,特に株式の評価額が高額である場合には多額の納税が必要となる。ところが,後継者は必ずしも十分な納税資金を有しているとは限らず,そのような場合には事業の円滑な承継が困難となるため,事業承継税制が創設された。事業承継税制は,贈与税の納税猶予と相続税の納税猶予の二つに分かれ,株式の生前贈与において贈与税の納税猶予を利用した場合,贈与者である先代経営者の死亡により贈与税が免除される(租税特別措置法70条の7の5第11項)。そして,生前贈与を受けた非上場株式等は,相続又は遺贈により取得したものとみなされ,相続人において相続税の課税を受けることになる(同法70条の7の7第3項)。しかし,この相続税についても一定の要件を満たした場合には,非上場株式の課税価格に対応する相続税について納税猶予を受けることができる(同法70条の7の8)。つまり,株式の生前贈与についての贈与税納税猶予と,株式相続についての相続税納税猶予を組み合わせることで,実質的に納税負担なく,先代経営者から後継者に事業を承継することができるのである。(2)特例措置と一般措置事業承継税制は,全般的に中小企業経営者が高齢化し,それにもかかわらず事業承継の準備が調っていないケースが多数に上るため,このままでは中小企業の廃業により地域経済に深刻な打撃を与えるおそれがあるという,「事業承継待ったなし」の状況を背景に,経済産業省・中小企業庁を中心とする施策に基づき,平成30年度税制改正によって大幅に拡充された。平成30年度改正によって設けられた事業承継税制の「特例措置」(租税特別措置法70条の7の5〜70条の7の8)においては,①平成30年4月1日から設例1 事業承継税制  31

元のページ  ../index.html#37

このブックを見る