事業承継は「法務」と「税務」が密接に交錯する分野であり,その円滑な実施に当たっては,これら双方の観点を踏まえた検討が必要不可欠である。ところが,「法務」の専門家である弁護士においては「税務」になじみがないことも多く,他方で,「税務」の専門家である税理士は必ずしも「法務」に精通しているわけではない。この点,本書は,「法務」と「税務」の双方に精通した弁護士が共同で執筆を担当したという点に特長がある。まず,第1章では,総論として,事業承継の各種手法を整理した上で,それぞれにおける法務上の留意点と税務上の留意点を網羅的に解説した。あわせて,法務でも税務でも共通して問題となることが多い株式の評価方法についての解説を加えた。これにより,法務と税務の双方の観点を踏まえた事業承継についてのイメージを具体的に持っていただくことを企図した。次に,本書の中心となる第2章では,事業承継に関する具体的事例を数多く取り上げ,事例ごとに法務と税務の双方の観点からの解説を加えた。取り上げた事例には,基礎的・典型的な内容を中心とする「親族内承継」「親族外承継」のほか,応用的な内容である「社団法人・財団法人の活用」「信託の活用」「国際承継」が含まれる。これにより,幅広いニーズの事業承継に対応していただけるように工夫した。最後に,第3章では,政府として中小企業の事業承継を総合的に支援されている所轄行政庁である中小企業庁の担当官へのインタビューを実施し,事業承継の支援に当たって特に重要な政策とされる事業承継税制を中心に,同庁の政策についての最新の動向を掲載している。これにより,近年大幅に拡充されてきた事業承継税制のほか,中小企業庁が推進する各種の事業承継支援策をより積極的に活用していただけるように配慮した。以上のように構成される本書は,木村浩之弁護士と木村道哉弁護士の両者が分担して執筆し,相互に加筆した上で,共著者らと同様に税務のエキスパートである佐藤修二弁護士に監修していただいた。本書が事業承継に携わる専門家・実務家の間で,広く執務の参考にしていただければ幸いである。はしがき vはしがき
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