判解雇
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事実認定と評価に関する争点事実認定・評価のポイント⑴ 1審の判断⑵ 2審の判断19 本件の最も重要な争点は,休職の原因となったXの腰痛に関する業務起因性の有無である。この判断が1審と2審とで分かれたことから,本稿はこの争点に注目して取り上げる。 1審は,業務用のスパイスを製造する工場においてスパイス原料を殺菌機に投入して殺菌する工程で行われる,キャスター付きのプラスチック製のコンテナ容器(容量約400リットル,容器自体の重量が約37㎏,原料が入った状態では最大で230㎏程度)に入った原料を容器を傾けて投入する作業(以下「本件作業」)の態様について,Xが主張するとおり,中腰でコンテナ容器の下端部に両手をかけて持ち上げる態様で行われるものであると認定し,本件作業による腰への負荷は相当程度大きなものであったと認めた。 そして,このことから,Xの腰痛発症の経緯については,平成20年7月25日,同年10月2日頃及び同年12月5日それぞれの本件作業中に腰を痛めたものと判断した。 その上で,Y社がXを平成24年1月20日限りで退職扱いにしたことは,業務上の負傷等による療養のために休業する期間中の解雇に相当し,労働基準法19条1項に違反する無効な措置であるとして,Y社・X間の雇用契約は存続しているものと結論付けた。 2審は,本件作業の態様について,スパイス原料の入ったコンテナ容器は約180ないし230㎏超と非常に重いため,Xが主張するような,コンテナ容器をその下端部に両手をかけて持ち上げて傾けることなどはできず,Y社が主張するとおり,キャスター付きのコンテナ容器の上端部を両手で押して勢いを付け,殺菌機の投入口手前に設置された鉄製足場板によって生じた段差部分にコンテナ容器のキャスター部分を衝突させ,その衝撃を利用してコンテナ容器を傾けさせて殺菌機の投入口にスパイス原料の大半を投入した後,コンテナ容器がある程度横倒しとなった状態でその下端部を両手で更に押して第1 労務提供の不能・労働能力の喪失/3

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