判解雇
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勝因分析・敗因分析20コンテナ容器を更に傾けて同容器内に残存するスパイス原料を殺菌機の投入口に全て投入するという態様であったと認定し,本件作業による腰への負荷が過重なものであったとはいえないと認めた。 そして,Xの腰痛については,Xが本件作業に従事する相当以前から罹患していた慢性的な腰痛が日常生活上の通常の動作によって一時的に悪化したことがある程度のものであるにすぎず,その原因が本件作業にあったということは到底できないと判断した。あわせて,労働基準監督署長による,Xの腰痛がY社の業務上の負傷に起因する疾病に該当するとの認定は,本件作業がXの主張する態様のものであったとの誤った事実を前提とするものであったとも判断した。 その上で,Xの腰痛を理由とする平成23年1月21日以降の休職は,業務上の傷病による休職ではなく,私傷病による休職であったことになるから,本件について労働基準法19条の適用はなく,Y社・X間の雇用契約は終了したものと結論付けた。 1審が本件作業の業務起因性を認定した根拠には,労働基準監督署が行った労災保険に係る調査資料が用いられている。Y社は,本件作業はXが主張するような態様で行われるものではないと主張したが,1審は,Y社が労働基準監督署からの調査に応じて提出した書面に添付された写真(Xの主張に沿った作業員の姿勢=中腰でコンテナの下端に両手をかけ傾けているようにみえる写真)等に着目して,Y社が主張する態様と整合していないと指摘している。Y社は,当該写真はコンテナを衝突させ傾けて内容物の大半の投入が終わった後,コンテナ内になお残っているものを空ける作業を撮影したものであるとも主張したが,1審判決は,作業工程のうちそうした最後の場面のみを撮影して提出する合理的な理由は見当たらないとしてY社の主張を排斥した。 これに対して,2審は,Xが主張する態様について,約230㎏の原料入りコンテナ容器の下端部に両手をかけて持ち上げ,コンテナ容器を傾けるためには少なくとも115㎏を持ち上げる力を必要とすること,小柄で細身のXに〔解雇〕 第1章 労働者の労務提供の不能,労働能力又は適格性の欠如・喪失

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