1572) Y社は,その上で人事評価,勤続年数,年齢を考慮して公平かつ合理的に雇止め対象者を選別したものである。〔裁判所の判断〕 1審は,概要,Y社がXを含む時給制契約社員に対し,労働時間の短縮による人件費削減ができない場合には,雇止めがあり得ることを告知しているが,「労働時間短縮に応じた者と応じなかった者とが分かれた場合には,後者から優先的に雇止めを行っていく」という一般的方針まで告知すべきであったと判断している。その理由は,労働時間の短縮により雇止めを回避しようとする場合,そうした一般的方針を告知することが労働時間短縮に応じてもらうための有効な説得手段であると考えられるから,と述べている(労働時間の短縮に応じれば,応じない場合に比較して,雇止めのリスク(賃金が減少するどころか職を失ってしまうリスク)を減少させることができると伝えることは,非常に有効な説得材料であると判示している。)。また,労働時間の短縮に応じた者を優遇するという一般的方針が告知されなければ,Xのように,人事評価において自分より劣る者が3名はいるから,自分は雇止めの対象にはならないと考えてしまい,労働時間の短縮に協力するか否かを危機感を持って検討できない労働者が出てくることも十分にあり得ることや,意向調査書に,「労働時間の短縮に応じても雇止めになる可能性がある」という一般論が告知されていたことについて,労働時間の短縮に応じれば,雇止めのリスクが減少するというY社が現実に採用した方針とは,逆のニュアンスの一般論しか告知されておらず,進んで労働時間の短縮に応じようという動機が生まれにくい状態もあったと判示している。Y社からの,当時は告知が不可能との主張については,労働時間の短縮の意向を示した時給制契約社員が少なかったことを受けて,雇止めの検討を始め,この一般的な方針を決定した段階(具体的な人選を行う前)で,それをミーティングの席等で時給制契約社員に説明すれば足りるのであるから,面談時に説明できなかったからといって,その後一切説明しなかったことが正当化されるものではないと判示している。 これに対して2審は,1審が「労働時間短縮に応じた者と応じなかった者とが分かれた場合には,後者から優先的に雇止めを行っていく」との一般的26
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