判解雇
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158〔Xの主張〕 本件雇止めの通知がされた直後に労働組合は苫小牧支店に対してXの雇止めの撤回を求めて団体交渉の申入れをしたが,苫小牧支店は,労働協約において個別従業員の雇止めの問題は団体交渉事項とはされていないとして,その申入れを拒否した。この点は,上記③1)と併せて,雇止めの際に誠意をもって協議すべき信義則上の義務に違反したものであり,本件雇止め手続は不相当である。〔Y社の主張〕 苫小牧支店は,同支店における人件費削減の必要性等について社員に周知した上,Xを含む時給制契約社員に対し,雇用調整の必要性とその手順について説明を行い,労働時間の短縮等について意向調査を実施した上で,最終手段としてXを雇止めするに至ったものであり,手続の相当性について何ら問題はない。 労働組合との団体交渉については,労働協約上,雇止めのような個別人事権の行使に関する事項については団体交渉の対象としないとされていること,及び本件雇止めの撤回についての団体交渉が開催されたか否かは,本件雇止め後の事情であり,本件雇止めの手続の相当性とは無関係であるから,この団体交方針を事前に告知しなければならないと判示した点については,その必要はないと判断している。具体的には,Y社は労働時間の短縮に応じなかった者の中から,人事評価,勤続年数,年齢等を考慮して,Xを含む3名を雇止めすることに決定したものであり,その人選が不合理であるとは認められないこと,人件費削減のために,まず初めに希望退職者を募集し,それに対する応募がなかったことから,次の手段として労働時間の短縮による調整を図ったことは,最終手段である雇止めを回避するためであったというべきであるから,事前に労働時間の短縮に応じれば雇止めの対象から除外されるということが告知されていたか否かにかかわらず,雇止めを回避するために労働時間の短縮に応じた者を優先的に雇止めの対象から除外したことが不合理であるということはできないと判示した。〔雇止め〕 第1章 期間の定めのない雇用契約の終了と社会通念上同視できる場合⑷ 手続の相当性

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