判解雇
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勝因分析・敗因分析159渉が開かれていないからといって,手続の相当性に欠けることにはならない。〔裁判所の判断〕 1審はこの点判断していないが,控訴審では,労働時間の短縮による調整の点について,手続の相当性の面でも問題がないと判示した。具体的には,Y社は,Xら社員に対し,Y社の経営が悪化していることや経営再建のためのY社全体及び苫小牧支店における人件費削減目標等を記載した『当社の現状と平成23年度の取組』や『平成23年度苫小牧支店経営実行計画書』を配布し,苫小牧支店の郵便課では,管理職が,社員のミーティングにおいて,その内容を説明し,また,『現下の危機を乗り越えるために』に基づいて,Y社が危機的状況にあり,対応が必要であることを説明したこと,支店長は,『業務量の減少等に伴う雇用調整について』を郵便課事務室内の掲示板に掲示し,Xが所属する係につき3名程度の希望退職者を募集し,Xも掲示板でこの書面を見ており,同書面には,希望退職者が少ない場合には,期間雇用社員の自支店内の配置換又は勤務日数・勤務時間の短縮を実施し,それでも調整がつかない場合は,雇止めをする旨が記載されていたこと,苫小牧支店は,X所属の係の時給制契約社員に対し,本件意向調査書を配付し,労働時間の短縮に応じるか等についての回答を求め,その後,管理職が各社員と面談して意向を確認しており,本件意向調査書には,勤務時間の短縮や担務の変更に応じても,必ずしも雇用契約を更新できるとは限らない旨が記載されていたこと,Xは,労働時間の短縮には応じられない旨の回答をしていたこと等をもって,手続も相当である旨を判示した。 雇止めを行うに当たって,どの程度雇止めの可能性を具体的に説明しなければならないか,という点において判断が分かれた事例であるが,1審の要求する説明は,実際に行ったとしてXが労働時間の短縮を受け入れたとしても,結局雇止めを回避できるとは限らないところからすると,結局のところ雇止めの「可能性」の説明にしかならないのであり,その有効性には疑問がある。いずれにせよ,使用者としては,できる範囲で,段階に応じて方針を明確にすることが望ましいことは確かである。26

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