判解雇
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第1 懲戒処分の意義1 懲戒処分の意義 企業は,経営目的を遂行するために,業務遂行に関する事項などの職場に関するルールを就業規則等により定めている。しかし,当該ルールに違反した労働者が出た場合に,当該ルール違反の状態が放置されてしまうと,ルール軽視の雰囲気が醸成されるなど,職場秩序の維持が困難となる。 そのため,企業秩序違反行為を行った労働者に対する制裁を科すことで,企業秩序を維持・回復するための制度が必要となる。 そこで,企業は,通常,戒告,けん責,減給,出勤停止,降格,諭旨解雇,懲戒解雇といった懲戒処分を制度化している。 もっとも,懲戒処分を受ける労働者にとっては,労働関係上の重大な不利益が及ぶことになるため,懲戒処分に対する規制が必要となる。第2 懲戒権の根拠・限界2 懲戒権の根拠・限界 使用者は,いかなる根拠で労働者に懲戒処分をなし得るのかということも問題となるが,「企業は,その存立を維持し目的たる事業の円滑な運営を図るため,それを構成する人的要素及びその所有し管理する物的施設の両者を総合し合理的・合目的的に配備組織して企業秩序を定立し,この企業秩序のもとにその活動を行うものであって,企業は,その構成員に対してこれに服することを求めうべく,その一環として,職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保するため,その物的施設を許諾された目的以外に利用してはならない旨を,一般的に規則をもって定め,又は具体的に指示,命令することができ,これに違反する行為をする者がある場合には,企業秩序を乱すものとして,当該行為者に対し,その行為の中止,原状回復等必要な指示,命令を発し,又は規則に定めるところに従い制裁として懲戒処分を行うことができるもの,と解するのが相当である。」(国労札幌支部事件・最高裁昭和54年10月30日労判329号12頁)と判示されていることからすれば,使用者が労働者に対して懲戒処分を行うためには,その事由と手段とを就業規178〔懲戒〕

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