判解雇
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勝因分析・敗因分析190処分を執ることは,精神的な不調を抱える労働者に対する使用者の対応としては適切なものとはいい難い」として,「欠勤は就業規則所定の懲戒事由である正当な理由のない無断欠勤には当たらないものと解さざるを得ず,…就業規則所定の懲戒事由を欠き,無効」と判断された。 労働契約法15条は懲戒について「使用者が労働者を懲戒することができる場合において,当該懲戒が,当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして,①客観的に合理的な理由を欠き,②社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,当該懲戒は,無効とする。」と定め,同法16条は解雇について「解雇は,①客観的に合理的な理由を欠き,②社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」と定め,いずれも①客観的に合理的な理由,②社会通念上の相当性が認められない場合に権利濫用として無効となると定めている(丸数字は筆者)。 これらに関して,職務懈怠等の場合,職務懈怠の回数・期間,状況や悪質さの程度,正当な理由ないしやむを得ない理由の有無,労働者の行為の「結果及び情状並びにこれに対する上告人(注:使用者)の対応等」(ダイハツ工業事件・最判昭和58年9月16日労判415号16頁),業務に及ぼした影響,使用者からの注意・指導・教育の状況,使用者側の管理体制,当該労働者の過去の処分歴,当該労働者の改善の見込みないし改悛・反省の度合い,過去の先例の存否,同種事例に対する処分との均衡などが考慮されると思われる(東京電力(諭旨解職処分等)事件・東京地判平成21年11月27日労判1003号33頁,国・気象衛星センター(懲戒免職)事件・大阪地判平成21年5月25日労判991号101頁等参照)。 メンタルヘルス不調により出勤できない場合,形式的には無断欠勤に該当しているとしても,懲戒事由該当性や社会通念上の相当性が否定されることがある。そこで,そのようなケースにおいて使用者は,無断欠勤の理由を確認し,メンタルヘルス不調が背景にあると窺われる場合,仮に無断欠勤の日〔懲戒〕 第1章 職務懈怠・業務命令違反

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