判解雇
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317 本書の執筆のご依頼を,日本加除出版株式会社の小室裕太郎氏より頂いたのは,平成31年の1月頃であった。裁判例の理解は,人事労務の実務に携わる者であれば,弁護士のみならず企業法務部,人事・労務部の方においても必須なのであるが,一言に裁判例を理解するといっても,その切り口,目的は意外と多様なものがある。それこそ,常日頃,現場の部下を指揮監督する管理職が,最低限,問題行為が起きたときにしなくてはならないこと,してはならないことといった切り口もあれば,経験を積んだ人事労務を専門とする弁護士が,やや分が悪い裁判を如何に挽回するか,といった切り口もある。それらの要請を全て網羅的に応えようとすると,総花的なものとなってしまいがちである。 本書の特性は,はしがきにもあるが,なるべく一審と二審とで結論が分かれたもの,そうでないとしてもやや判断が微妙なもの(特に事実認定面)を重点的に扱った点にある。そのため,通常の労働事件の裁判例を取り扱う書籍であれば,当然に紹介されるような裁判例でも,必ずしも取り扱っているとは限らない一方で,実際に裁判になった場合の解雇有効・無効の判断の境界線みたいなものを浮かび上がらせることができる素材が集まっているところである。 実は,その素材(裁判例)の捜索に,執筆陣が一番苦労したところである(言うまでも無いが,そのような好素材は,そうそう目に付くものではない。)。そのため,執筆陣としては,苦労を掛けると共に,そうした好素材を捜索する修練と読み込む機会を得ることができ,大いに得るものがあったといえる。執筆を務めた当事務所の所員弁護士には,業務の合間を縫っての執筆をお願いし,一部にはノルマと督促を課し,ストレスを掛けてしまったところもなくはなかったが,所長弁護士としては,本書は,読者に先行して,当事務所の所員弁護士の技能アップに大きく寄与したものと自負しており,小室裕太郎氏及び岩尾奈津子氏には厚く御礼申し上げる次第である。あとがきあとがき

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