第一章総説4 第一編 根抵当権の設定そこで、根抵当権を利用する。根抵当権ならば、一度不動産に債権の範囲を「商品供給取引」とした根抵当権を設定するだけで、当該取引により生じた債権はすべて当該根抵当権により担保されることとなる。すると、メーカーも小売店も毎月の面倒な登記手続から解放されることとなる。ここに根抵当権の大きな利用価値があるわけである。第3 (元本確定前)根抵当権の意義根抵当権は「債権者」と「債務者」との間に生じる「債権の範囲」に含まれる債権を「極度額」を限度として、新たに生じる債権を次々と担保する。ある被担保債権が弁済等によって消滅しても、新たに生じる債権を担保する極度額の枠が広がるだけで、根抵当権という担保物権自体は影響を受けない。たとえすべての被担保債権が弁済等により消滅しても、根抵当権は消滅することはない。また、債権譲渡、代物弁済等により被担保債権が処分されても、その債権が根抵当権の被担保債権の範囲から離脱するだけであり、根抵当権はそれに伴って移転することもない。(元本確定前の)根抵当権は被担保債権から切断された極度額を限度とする目的物の価値(優先弁済権)を支配する権利であり、価値支配権又は枠支配権と呼ばれている。根抵当権(元本確定前の)は「債務者」「債権の範囲」「極度額」の3つを重要な要素とした三角形で表すことができる。この3つの要素全てを満たす債権が当該根抵当権で担保される(根抵当権がどの債権を担保するかは、元本確定時に特定されるため、厳密には担保される可能性があるにすぎない。)。言い換えれば、これらの3つは根抵当権の被担保債権の範囲を画するための基準(被担保債権の識別基準)といえる。極度額については、債権額が極度額以内の債権のみを担保するという意味ではなく、極度額を超過する債権であっても当該根抵当権で担保されるが、担保される額は極度額までという意味である。
元のページ ../index.html#22