第一章総説【元本確定前の根抵当権のイメージ】根抵当権(元本確定前の)は「債権者」「債務者」「債権の範囲」「極度額」の4つを重要な要素とした三角形の筒で表すことができる。根抵当権の担保する債権はどの債権なのか、言い換えれば、根抵当権の被担保債権はどれなのか、という観点から考えてほしい。この世のなかには、様々な取引により生じた無数の債権が存在する。今、1つの根抵当権が設定された場合に、その根抵当権により担保される債権は、世のなかにある無数の債権のなかのどれなのかを考えてみる。抵当権ならば、原因に「年月日金銭消費貸借」と具体的に被担保債権の種類とその日付が記載され、さらには債権者、債務者が明らかであるので特定は容易であろう。しかし、根抵当権の、原因には、「年月日設定」としか記載されない。では、根抵当権の場合には、どのように被担保債権を特定するのか。根抵当権の場合には、被担保債権を特定し得る基準が記録される。それが「債権者」「債務者」「債権の範囲」の3つである。別の言い方をすれば、根抵当権の設定の段階では、まだ生じていないような債権をも担保させることができるので、生じていない債権を具体的に抵当権のように「年月日金銭消費貸借」というように特定することは不可能である。そこで、根抵当権の実行の段階でどの債権を担保するのかが判別できるように「債権者」「債務者」「債権の範囲」の3つを記録するという言い方も可能であろう。つまり、根抵当権は、世のなかに存在する無数の債権を無制限に担保するわけではなく「債権者」「債務者」「債権の範囲」という「被担保債権の識別基準」で画されたある一定の被担保債権のみを担保するものである。「被担保債権の識別基準」とは、根抵当権の被担保債権となるか否かを判別するための判断の基準という意味である。下の図では、世のなかに存在する無数の債権を大きな円で示し、根抵当権は、そのなかの一部のみを担保するものであり、その債権に該当するか否かの判断の基準として「債権者」「債務者」「債権の範囲」を三角形のそれぞれの頂点とし、その三角形の範囲内の債権のみが根抵当権により担保されることをイメージしてみた。これに加え、極度額を三角形の深さと考え、根抵当第一章 総説 5
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