独知
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帯電話端末及びCDMA携帯電話基地局並びにこれらに用いられる半導体集積回路等に関する技術の研究開発意欲が損なわれ,クアルコムの当該技術に係る市場における有力な地位が強化されることとなり,当該技術に係る市場における公正な競争が阻害されるおそれがある,としたのである。このように,マイクロソフト審決及びクアルコムに対する排除措置命令が,片務的なライセンスであると構成し,公正競争阻害性を肯定したのに対し,クアルコム審決は,本件ライセンス契約をクロスライセンスと構成し直して公正競争阻害性を改めて判断し,公正競争阻害性を有すると認めるに足りる証拠はないとした。すなわち,本件審決は,本件非係争条項等の不合理性の判断は,無償ライセンスとしての性質や当事者が負う義務の不均衡だけでなく,権利行使が制限される範囲の広範性についても考慮すべきであり,ライセンシーの知的財産権の行使が制限される部分のみ取り出すのは適切ではないとして,不合理性を否定し,クアルコムに対する排除措置命令を取り消した。このように,クロスライセンスと構成した場合,片務的なライセンスと構成した場合に比べ,公正競争阻害性の立証のハードルは高くなり,審査官による立証が不十分であるとされる可能性はより高まろう。しかし,クロスライセンスと構成したとして,どのような場合に公正競争阻害性が認められるのか,公正競争阻害性をいかなる事実や証拠から立証すべきかについてはクアルコム審決では述べられておらず,この点の事例の集積が待たれる。第1章 基礎知識編〜まず押さえておきたい知的財産権と独禁法との交錯の出発点〜46

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