独知
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が実施されるため,市場の地理的範囲が広くなる傾向にあり,ネットワーク効果による影響が広範な範囲に生じやすいとされている。さらに,低コストでの参入が可能であるという特徴もある。これらの特徴は,一見すると競争を促進する効果があるように思える。しかし,一方で,ネットワーク効果の広範さゆえに,あるデジタル・プラットフォーム事業者が一旦市場支配的地位を確保した場合,当該事業者は競合他社との関係で圧倒的に有利となりやすく,独占化・寡占化する傾向になりやすい。これがデジタル・プラットフォーム事業に特化した規制が必要ではないか,という競争法上の関心を呼ぶ大きな理由であり,我が国だけでなく,世界中における競争政策上の課題である(EU,アメリカでGAFAに対する規制の在り方が連日のように報道されていたのは記憶に新しいところである。)。これに加え,ネットワーク効果に伴うデータの集積・利活用の進展により,デジタル・プラットフォーム事業者は,利用者に対し,更なるサービスの拡充をもたらす。そのため,一旦特定のデジタル・プラットフォームの利用を決めた者にとり,そのプラットフォームの変更を行うことは多大なコスト(これを「スイッチングコスト」という。)が生じ,困難を伴うものとなる。結果として,利用者は当該プラットフォームの利用に閉じ込められるという,いわゆる「ロックイン効果」が働きやすい。これもデジタル・プラットフォーム事業者による独占・寡占の維持が生じやすい理由の1つである。デジタル・プラットフォーム事業者による独占・寡占がイノベーションによって確保されている限りにおいては,競争当局が問題視すべきものではないかもしれない。しかし,デジタル・プラットフォーム事業者が自らの支配的地位を濫用し,消費者や取引先事業者に不当な不利益を課すことにより公正な競争をゆがめたり,競争者となるおそれのある新Q10 デジタル・プラットフォーム事業の“いま”117

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