本書は,知的財産法と独禁法の交錯する側面をテーマとして,この2つの分野に詳しい弁護士が中心となって包括的にまとめ上げた書籍です。知的財産法は,権利の独占を認めることを中核とする法制であり,これに対して独禁法は,その名のとおり,独占を禁止する趣旨のものですから,2つの法制は,一見矛盾し,ぶつかるように思え,両者の調整が理論的にも実務的にも論点になり得ます。私も,学生時代に受講した中山信弘東京大学名誉教授の知的財産法や白石忠志東京大学教授の独禁法の授業でこうした論点が取り上げられたことが印象に残っており,また,知的財産法の田村善之東京大学教授に『競争法の思考形式』(有斐閣,1999)というご高著があることも存じ上げていたことから,ビジネスローの2つの主要領域を横断する興味深いテーマだなと思っていました。ただ,その後の私はビジネスローの中でも租税法に集中するようになったため,この論点は記憶の奥底に眠っていましたが,最近になって,『時効・期間制限の理論と実務』の編集を通じてお世話になっていた日本加除出版の星野将慶氏より,この論点をテーマとした書物はあまり見られないため,これを正面から取り上げた一書を是非世に出したい,というお話をいただきました。私自身もその昔から関心のあったテーマでもあり,星野氏に,岩田合同法律事務所のパートナー弁護士で,独禁法を専門とする永口学弁護士,知的財産法を専門とする工藤良平弁護士をご紹介し,両弁護士がリードしてまとめたのが本書です。私は,昨年から,東京大学法科大学院において,「租税と諸法」と題する授業を担当しています。授業内容は,担当教員に一任されていますi刊行に寄せて
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