企業活動の根本を担う法律は何かと聞かれた場合,どのような法律を思い浮かべるでしょうか。民法,会社法,労働法といった法律を思い浮かべる方が多いでしょうか。しかし,新しい技術を公開した者に一定期間の独占的権利を与える特許法を含む「知的財産法」と,独占等の競争政策上相当でない行為を排除して自由競争の促進を志向する「独禁法」等の競争法もまた,企業活動の多くの場面で検討が必要となり,上記の各法に勝るとも劣らない重要な役割を有する,企業活動の根本を担う法律であるといえます。知的財産法と独禁法は,しばしば相反する役割を担い,衝突するように見える,ともよく言われますが,むしろ補完・協力関係にあると捉える方が正鵠を射ています。例えば,企業が画期的な発明を行った場合,特許権を取得して自社のみで独占的に実施したり,あるいは第三者に一定の条件や制約をつけて特許発明の実施許諾をして技術を利用させるなどして,利益を獲得することが可能です。そして,知的財産権の活用によって利益の獲得を志向するという行動は,営利を目的とする企業としては当然のことといえます。一方,かかる営利活動が独禁法に違反することがあれば,企業は,独禁法に基づく様々な制裁を受け,金銭的な負担やレピュテーション低下といった不利益が発生する可能性があります。これらの制裁は,営利活動によって得る利益をはるかに超える損害をもたらすものであり,企業は一線を越えた営利活動を控えるようになります。このように,知的財産法と独禁法は,企業活動にインセンティブを与iiiはしがき
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