2第1章 民法770条1項5号の離婚原因㈠ 妻ニ不貞ノ行為アリタルトキ㈡ 夫カ著シク不行跡ナルトキ㈢ 配偶者ヨリ甚シク不当ノ待遇ヲ受ケタルトキ㈣ 配偶者カ自己ノ直系尊属ニ対シテ甚シク不当ノ待遇ヲ為シ又ハ配偶者ノ直系尊属ヨリ甚シク不当ノ待遇ヲ受ケタルトキ㈤ 配偶者ノ生死カ三年以上分明ナラサルトキ㈥ 其他婚姻関係ヲ継続シ難キ重大ナル事情存スルトキ二 前項第一号乃至第五号ノ場合ト雖モ総テノ関係ヲ綜合シテ婚姻関係ノ継続ヲ相当ト認ムルトキニハ離婚ヲ為サシメサルコトヲ得ルモノトスルコト」 この規定によって,初めて6号の相対的離婚原因が規定されたのである。 そして,この相対的離婚原因は,穂積重遠が以前から主張していた説に沿うものであった。 穂積重遠は,相対的離婚原因制度を採用しているドイツ民法及びスイス民法を参考として,民法813条の末号に相対的離婚原因を附加することを主張していたのである。 当時のドイツ民法1568条は,有責主義に基づく相対的離婚原因を規定しており,穂積重遠が提唱した民法813条改正案の相対的離婚原因も,有責的離婚原因を含むものであった。 しかし,この民法改正は,戦局の悪化等から最終的には実現しなかった。2 大正8年設置の臨時法制審議会の離婚原因規定 大正8年7月,明治民法の改正作業のための臨時法制審議会が設置された。そして,大正14年5月に同審議会総会で可決された「民法親族編中改正ノ要綱」16項は,離婚原因を次のとおり規定した。 「一 離婚ノ原因ハ大体ニ於テ左ノ如ク定ムルコト3 昭和23年施行の現民法の規定 憲法改正に伴い民法親族編及び相続編の改正作業が行われ,昭和22年12月に公布された民法(昭和22年法律第222号)で,現在の民法770条の規定が創設された。
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