婚継続
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3第1 民法770条の立法過程と趣旨 民法770条の規定は,個人の尊厳と両性の本質的平等の実現のため,離婚原因について夫婦平等にすることとし,それ以外は,基本的にはほぼ上記の要綱16項の規定を継承したものといえる。 我妻榮も「新法は,貞操上の不平等を改めたことはいうまでもないが,その他の点では,大体において,改正要綱の態度に倣い,数歩の前進を企てたものである。」と述べている(我妻榮『親族法』123頁(有斐閣,1961))。 この改正作業の中で,奥野政府委員は,民法770条1項5号や2項の立法趣旨について次のように述べている。 すなわち,「従来はむしろ列挙主義でこの各号に該当した場合に限って離婚の原因といたしたのでありますが,今度は列挙主義をやめまして,例示的に一号から四号まで掲げてありますが,それは結婚を継続しがたい重大な原因の場合である一つの例であるということで掲げておるのであります。……列挙主義にいたしますと,それ以外の場合は,たとえばだれが考えても婚姻を継続しがたい重大な原因だと思われるにも拘わらず,たまたまこれに規定がないために離婚の原因にならない不都合があってはというふうに考えまして,包括的な規定を五号に掲げたわけであります……かりにその例は適当であるかどうかはわかりませんが,形式的に不貞な行為ということならば,かりに旅行先等で何か間違いがあったというような形式的なことでも,やはりこれにはいるというようなことになるのでありますから,そういう場合にはいろいろの事情を斟酌して,そこはやはり婚姻を続けていった方が適当ではないかというように裁判所が認める場合,形式的には一号がこれにはいっても実際上の実情を汲んで婚姻を継続せしめる方がよろしいと思う場合には,その請求を排斥することができるというゆとりをとったわけでありまして,……」と説明されている(最高裁判所家庭局編「民法改正に関する国会関係資料〈昭和28年〉」151頁)。

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