婚継続
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第2章 有責配偶者の離婚請求24なければならないのと同様,あらゆる破綻に離婚が与えられるべきであり,離婚によって一方配偶者が困難するという問題は,別に財産分与なり慰藉料なりで救済すべきだということにならなければならない。しかしこの救済方法が十分有効でない場合が実際には少なくない。かかる場合わずかの財産分与もしくは慰藉料で離婚させてしまうより,夫婦関係の実体は回復することがなくても,なお夫婦として扶養を続けさせる方が救済の目的を達することもある。万一の場合には相続権もあることであるから,もし相手配偶者が離婚を欲しないなら,有責配偶者の離婚請求を認容すべきでないということになる。客観的理論的な破綻主義離婚法に加えられた,一つには道義感的な,二つには実際上の打算的な制約として,少なくも当分は承認せざるをえない妥協であろう。」と述べる(中川善之助『新訂親族法』318頁(青林書院新社,1965))。⑶ 佐藤哲郎説 また,前後するが昭和62年最判([裁判例23])の裁判官佐藤哲郎の意見は,以下のとおりである。 「民法770条1項5号は,同条の規定の文言及び体裁,我が国の離婚制度,離婚の本質などに照らすと,同号所定の事由につき専ら又は主として責任のある一方の当事者からされた離婚請求を原則として許さないことを規定するものと解するのが相当である」「我が国の裁判離婚制度の下において離婚原因の発生につき責任のある配偶者からされた離婚請求を許容するとすれば,自ら離婚原因を作出した者に対して右事由をもって離婚を請求しうる自由を容認することになり,同時に相手方から配偶者としての地位に対する保障を奪うこととなるが,このような結果を承認することは離婚原因を法定した趣旨を没却し,裁判離婚制度そのものを否定することに等しい。また,裁判離婚について破綻の要件を満たせば足りるとの考えを採るとすれば,自由離婚,単意離婚を承認することに帰し,我が国において採用する協議離婚の制度とも矛盾し,ひいては離婚請求の許否を裁判所に委ねることとも相容れないことになる。法は,社会の最低限度の要求に応える規範であってもとより倫理とは異なるも

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