25第1 昭和62年最判以前の有責配偶者の離婚請求に関する学説のであるが,正義衡平,社会的倫理,条理を内包するものであるから,法の解釈も,右のような理念に則してなされなければならないこと勿論であって,したがって信義に背馳するような離婚請求の許されないことは法の要求するところというべきであ」る。「有責配偶者からの離婚請求を認めることは,その者の一方的意思によって背徳から精神的解放を許すのみならず,相手方配偶者に対する経済的・社会的責務をも免れさせることになりかねない」「しかし,有責配偶者からの離婚請求がすべて許されないとすることも行き過ぎである。」「有責配偶者からされた離婚請求であっても,有責事由が婚姻関係の破綻後に生じたような場合,相手方配偶者側の行為によって誘発された場合,相手方配偶者に離婚意思がある場合は,もとより許容されるが,更に,有責配偶者が相手方及び子に対して精神的,経済的,社会的に相応の償いをし,又は相応の制裁を受容しているのに,相手方配偶者が報復等のためにのみ離婚を拒絶し,又はそのような意思があるものとみなしうる場合など離婚請求を容認しないことが諸般の事情に照らしてかえって社会的秩序を歪め,著しく正義衡平,社会的倫理に反する特段の事情のある場合には,有責配偶者の過去の責任が阻却され,当該離婚請求を許容するのが相当である。」⑴ 中川淳説 中川淳は,「離婚法において,婚姻関係の破綻的事実は,事実先行の性格をになう身分法においては,とうぜん評価がなされてしかるべきであるということである。身分法関係の発生および消滅にさいして,身分的事実のまえに,法規がきわめて無力であり,法規のみとめたくない事実でも,これをいつか認めざるを得ないようになるのは,身分法における特色であるとされている。」「近代法における婚姻は,その成立において,自由意思を尊重せられ,強制せられない結合として維持せられるものであり,それは,同時に,自由なる婚姻の意思を喪失してしまった当2 積極的破綻主義説 一方,有責配偶者の離婚請求を認める学説には,主に以下のものがある。
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