婚継続
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iはしがき 離婚訴訟は,毎年約1万件が提起されているが,その離婚訴訟で主張される離婚原因は,ほぼ100%に近く民法770条1項5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」であろう。 民法770条1項5号は,いわば日本の離婚訴訟の離婚原因の根本をなしており,これは離婚訴訟だけでなく,離婚調停においても離婚請求判断の基準ともなっている。 このように5号事由は離婚実務上極めて重要であるにもかかわらず,その解釈が,判例,実務上明確になっているとは言い難い。 5号事由の認定にあたって,別居期間,当事者の有責行為,子の存在等をどのように認定,考慮するかは,裁判官の比較的広い裁量に委ねられているともいえる。 そして,共働き夫婦の数が,片働き夫婦の数を大きく上回り,夫の育児休業の取得等,夫が育児に参加することが増えてきた現代において,裁判官も年齢,性別,環境等によって,結婚観,離婚観が大きく異なることがある。 離婚訴訟を担当した弁護士であれば,裁判官の結婚観,離婚観により,判決内容や和解の勧め方がかなり異なることを経験したことがあるであろう。 また,人事訴訟法の改正で,平成16年4月1日から離婚訴訟事件は地方裁判所から家庭裁判所に移管されたこと等に伴い,離婚訴訟の審理が迅速化,簡易化され,5号事由の有無の審理,判決も簡易化したことは否めないであろう。 このような背景から,5号事由の解釈が深まることはなく,その認定は,裁判官の広い裁量に委ねられ,当事者や弁護士は,判決の予測がつきづらい状態に置かれているのが実情であると思われる。 著者は40年以上にわたり,離婚事件を担当してきた弁護士であるが,このような状況を少しでも改善し,5号事由の解釈についての議論に資するはしがき

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