婚継続
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第3章 有責配偶者の離婚請求と5号所定の事由による離婚請求との関係40会正義に反するような結果がもたらされる場合でなければ,その離婚請求をどうしても否定しなければならないものではないというべきである。」と述べて,有責配偶者の妻からの離婚請求の場合には「有責配偶者の離婚請求」法理を適用する必要がないかのような判示をしている。⑴ 久保野恵美子説 久保野恵美子は,昭和62年最判以後において「有責配偶者」であるという範疇を設定した上で,離婚請求認否の基準を問う思考の段階は必然ではないと考えられるとし,「有責配偶者であることの一事をもってしては離婚請求棄却が基礎付けられない点で,有責性は他の要素との相関によって離婚請求の認否に影響を与えるにすぎないとも言え,そうであれば,有責配偶者であるか否かを他の要素に優先して問題とする解釈はその重要性を失うとも思える。」と述べる(久保野恵美子論文428頁)。⑵ 犬伏由子説 犬伏由子は,「有責配偶者からの離婚請求を破綻主義離婚法の中でどのように位置づけるのかについては昭和62年大法廷判決でも必ずしも明確にされていない。大法廷判決は,㈠婚姻が破綻していても,㈡有責配偶者からの離婚請求である場合は,㈢信義則に反するとはいえないときには請求が認容されるとしたが,信義則の具体的内容を三要件または諸要素であると考えても,三要件または諸要素と婚姻の破綻との関係ははっきりしない。むしろ,三要件または諸要素は婚姻破綻の判断基準を示しており,それを信義則の適用と言っているに過ぎないとも考えられる。しかも,信義則の内容として重視されるのが長期間の別居という事実であるとしたら,婚姻の破綻をまず認定しておきながら,有責配偶者からの離婚請求の場合,更にかなり長期の別居を要求する判例の状況は,2 「有責配偶者の離婚請求」法理に反対する学説 学説でも「有責配偶者の離婚請求」法理に疑問を呈するものが出てきている。

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