41第1 「有責配偶者の離婚請求」法理の役割『自ら婚姻関係を破綻させたような勝手な者が離婚を認められるまでには相当長期間我慢しなければならない』と言っているにすぎず,有責配偶者の離婚請求の場合は婚姻破綻の認定のハードルを二重にするか,あるいはハードルを高くしているものと考えられる。」と述べる(犬伏由子「未成熟子がいる有責配偶者からの離婚請求が認容された事例」判時1524号208~209頁)。 「有責配偶者の離婚請求」法理において,婚姻破綻が認定される別居期間より相当長期の別居期間が要求される理由について,昭和62年最判の最高裁判例解説は「別居期間は,(略)有責性を含む諸事情から解放するに足りるものでなければならず,したがって,相当の長期間であることが必要である。」と述べる(最判解説589頁)。3 「不貞行為=有責性」認定の問題 判例で明らかなように,「有責配偶者の離婚請求」法理が適用となる「有責配偶者」は,ほとんどの事案が配偶者の不貞行為の場合である。不貞行為が有責行為であることは当然であるが,夫婦の婚姻が破綻となる原因は,当事者双方にある場合がほとんどであり,そのうちから不貞行為の場合のみを取り出して,別の法理を適用するのは,現実にそぐわないことが多いと思われる。 この点について二宮・榊原も「実際には,有責性が配偶者の一方のみにあるという事案は極めてまれであり,不貞の事案であっても,その前に信頼関係を徐々に破壊するさまざまな事実の積重ねが存在していることが普通である。現在の判例では,ひとたび不貞が証明され,有責配偶者と位置づけられると,実際には,双方の有責性の割合が6対4や7対3程度の事案であっても,10対0のような扱いに転じてしまいがちである。」と述べている(二宮周平・榊原富士子『離婚判例ガイド 第3版』78頁(有斐閣,2015))。4 婚姻破綻の徴表としての別居期間と相当長期間の別居との関連
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