第4章 離婚慰謝料48行でなければならず,間接強制を認めるべきでない等の理由から,婚姻継続中については,婚姻義務違反に対する損害賠償請求を否定している(上野雅和「夫婦間の不法行為」奥田昌道ほか編『民法学7』90頁(有斐閣,1976))。 また,成澤寛も,「夫婦間で行われた個別的行為に対する損害賠償については,一般的法益侵害の場合と婚姻義務違反の場合を分け,一般的法益侵害行為については通常の不法行為として婚姻中の賠償請求が認められるが,婚姻義務違反については,それが婚姻破綻を導いた場合をのぞき,不法行為を構成しないものと解したい。」と述べる(成澤寛「離婚慰謝料と不貞行為慰謝料に関する理論的考察」岡山商大法学論叢第17号所収124頁)。 判例では,配偶者の不貞行為による慰謝料請求については,婚姻継続中(離婚前)の不法行為の成立を認めている。例えば,[裁判例60]の前訴では,妻が婚姻中に夫と不貞相手に対し,不貞行為に基づく慰謝料請求訴訟を提起し,夫と不貞相手に連帯して300万円の慰謝料の支払を命ずる判決が下されている。 しかし,不貞行為以外の婚姻義務違反については,独立の不法行為とするかについて,判例は消極的であろう。 東京高裁平成21年12月21日判決([裁判例61]の控訴審判決)は,「離婚に伴う慰謝料請求は,相手方の一連の有責行為により離婚を余儀なくされたことの全体を一個の不法行為として,それから生じる精神的苦痛に対する損害賠償請求と扱われるのが通常であるが,その場合,その間の個別の有責行為が独立して不法行為を構成することがあるかについては,当該有責行為が性質上独立して取り上げるのを相当とするほど重大なものであるか,離婚慰謝料の支払を認める前訴によって当該有責行為が評価し尽されているかどうかによって決するのが相当である。」と述べている。3 離婚自体慰謝料の内容⑴ 判例では,離婚自体慰謝料について「相手方の有責不法な行為によっ
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