49第1 離婚慰謝料の法的性質て離婚するの止むなきに至ったことによる損害賠償」([裁判例48],[裁判例49])と解されている。 判例は,一貫して離婚自体慰謝料を不法行為に基づく損害賠償と解しているが,その被侵害利益は何かについては,判例でも明確ではない。一般には,「婚姻関係,夫婦関係そのもの」「離婚せざるをえなくなった夫または妻の配偶者たる地位」と解されている。⑵ 判例は,離婚自体慰謝料を不法行為に基づく損害賠償と解しているが,不法行為の要件については,一般の不法行為の要件とは異なりかなり緩和して解している。 この点について,松原正明は,「個別的有責行為その他を原因として婚姻関係が破綻し,その結果離婚が成立すれば,離婚原因を作った一方が,配偶者としての地位を喪失する他方に対し,支払義務を負うことになる慰謝料である(相手方の一連の有責行為により離婚に至らしめられたという経過全体を一個の不法行為と捉え,離婚へと発展させられたことによる精神的苦痛と離婚という結果自体から受ける精神的苦痛に対する損害賠償請求。離婚の成立時から3年の消滅時効にかかる。)」と述べており(松原『人事訴訟の実務』345頁),これが実務の通説であろう。4 離婚原因慰謝料と離婚自体慰謝料との関係 離婚原因慰謝料と離婚自体慰謝料との関係について,一般に①峻別説と ②一体説があると言われている。 ①の峻別説とは,離婚慰謝料とは離婚自体慰謝料を指し,離婚原因慰謝料は離婚そのものによってはじめて生じた損害を賠償するものではないので,離婚とは別個独立した不法行為に基づく損害賠償請求と捉える説である(岩志和一郎「家族関係と不法行為」155頁,潮見佳男『不法行為法Ⅰ(第2版)』225頁(信山社,2009))。 他方,②の一体説とは,離婚原因となった個別有責行為の発生から,離婚に至るまでの一連の経過を全体として一個の不法行為と捉え,離婚慰謝料には,離婚原因慰謝料と離婚自体慰謝料が含まれるとする見解である(大津66頁)。
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