キーポイント1 夫婦関係の破綻の程度について,離婚原因となる破綻と,同居義務の具体的形成を不相当とする破綻が異なることを判示した高裁決定である。参考裁判例:婚姻破綻88ことからすると,共同生活を営む夫婦間の愛情と信頼関係が失われる等した結果,仮に,同居の審判がされて,同居生活が再開されたとしても,夫婦が互いの人格を傷つけ,又は個人の尊厳を損なうような結果を招来する可能性が高いと認められる場合には,同居を命じるのは相当ではないといえる。 そして,かかる観点を踏まえれば,夫婦関係の破綻の程度が,離婚原因の程度に至らなくても,同居義務の具体的形成をすることが不相当な場合はあり得ると解される。」 「本件においては,Yが提起した離婚訴訟において,いまだ婚姻を継続し難い重大な事由があるとまでは認められないとしてYの請求を棄却する判決が平成28年*月*日に確定しているものの,控訴審判決は上記の別居期間が,YとXにおいて共に生活を営んでいくのが客観的に困難になるほどの長期に及んだものとはいえないとし,婚姻関係の修復の可能性がないとまではいえないことからYの離婚請求を棄却したにとどまるものであって,YとXの婚姻関係は,上記判決の時点でも既に修復を要するような状態にあったことは,明らかである。そして,控訴審における弁論終結の時点で,婚姻期間中の同居期間が約3年10か月であるのに対し,別居期間は約2年7か月に及んでおり,その後,YのXに対する不信感等は,X自身をストレッサーとして適応障害の症状を呈するほどに高まっている。そうすると,YとXの夫婦関係の破綻の程度は,離婚原因といえる程度に至っていないとしても,同居義務の具体的形成をすることが不相当な程度には至っていたというべきである。」2 破綻概念を考える上で参考になる珍しい判決であろう。
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