事案判旨9114 有責配偶者の夫の離婚請求を棄却した事案【一 審】 奈良地裁判決(民集6巻2号117頁)【控訴審】 大阪高裁昭和24年7月1日判決(民集6巻2号119頁)【上告審】 最高裁昭和27年2月19日判決(昭和24年オ187号)(民集6巻2号110頁) X(夫:原告,控訴人,上告人)とY(妻:被告,被控訴人,被上告人)は,昭和12年8月に結婚し,昭和18年3月に婚姻の届出をした。XY間には子がなかった。 Xは,昭和21年7月,Aと情交関係を結び,Aが妊娠したため夫婦間の感情は次第に疎隔した。 Yは昭和22年3,4月以来XにAとの関係を絶つことを要求したが,Xがこれを拒絶したので口論となり,元来嫉妬深く感情が激するままに行動する性癖のあるYは,Xに暴言をはいたり,ほうきでたたいたり出刄庖丁をふりまわしたり,頭から水をかけたり,靴を便所に投げこんだりした。 Xは同年4月中旬Yとの同居をきらって家出してAと同居し,Yとの夫婦関係を解消する意思を表明したので,Yは同年5月大分県の実家に帰っていた。同年6月,XとAとの間に男子が生まれた。 Xは,Yに対し本件離婚訴訟を提起した。1 一審は,Xの請求を棄却した。2 控訴審も,一審を維持して,Xの控訴を棄却した。3 上告審は,以下のとおり述べて,Xの上告を棄却した。 「論旨では本件は新民法770条1項5号にいう婚姻関係を継続し難い重大な事由ある場合に該当するというけれども,原審の認定した事実によれば,婚姻関係を継続し難いのはXが妻たるYを差し置いて他に情婦を有するからである。Xさえ情婦との関係を解消し,よき夫としてYのもとに帰り来るならば,何時でも夫婦関係は円満に継続し得べき筈である。即ちXの意思如何にかかることであつて,かくの如きは未だ以て前記法条にいう『婚裁判例14
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