キーポイント1 有名な通称「踏んだり蹴ったり判決」である。2 本最高裁判決は,一般に有責配偶者の離婚請求を認めないとの判例参考裁判例:有責配偶者の離婚請求92姻を継続し難い重大な事由』に該当するものということは出来ない。(論旨ではYの行き過ぎ行為を云為するけれども,原審の認定によれば,Yの行き過ぎは全く嫉妬の為めであるから,嫉妬の原因さえ消滅すればそれも直ちに無くなるものと見ることが出来る)XはXの感情は既にXの意思を以てしても,如何ともすることが出来ないものであるというかも知れないけれども,それも所詮はXの我侭である。結局Xが勝手に情婦を持ち,その為め最早Yとは同棲出来ないから,これを追い出すということに帰着するのであつて,もしかかる請求が是認されるならば,Yは全く俗にいう踏んだり蹴たりである。法はかくの如き不徳義勝手気侭を許すものではない。道徳を守り,不徳義を許さないことが法の最重要な職分である。総て法はこの趣旨において解釈されなければならない。」の立場を明確にした判決と理解されている。3 しかし,昭和62年最判の最高裁判例解説は,本判決は,「原審の確定した事実関係の下においては,婚姻関係の復元が不可能とはいえないから,『婚姻を継続し難い重大な事由』に該当しないとしたものであって,右事案において,婚姻関係の破綻を前提にして請求者が有責である場合には離婚請求は許されないとの判決要旨を引出すのは疑問である。」と述べている(最判解説548頁)。
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