婚継続
60/66

参考裁判例:不貞慰謝料198そして,この別居はAがX1に責められ愛情を全く喪失したため敢行されたものであつて,YがAに同棲を求めたものではなく,Yに直接の責任があるということはできない。そしてAとYが同棲生活に入つたのは,前記認定のとおり,AとX1との婚姻生活が既に破綻した後であつて,しかもAの方からYのもとに赴いたものであつて,これをもつてYに違法があるとすることはできない。 また,AがYと同棲して以来子供であるX2らはAの愛ぶ養育を受けられなくなつたわけであるが,これは一にAの不徳に帰することであつて,Yに直接責任があるとすることはできない。」3 上告審は,以下のように述べて,原判決中X1に関する部分のみを破棄して差し戻した。 「夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持つた第三者は,故意又は過失がある限り,右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか,両名の関係が自然の愛情によつて生じたかどうかにかかわらず,他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し,その行為は違法性を帯び,右他方の配偶者の被つた精神上の苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである。」 「妻及び未成年の子のある男性と肉体関係を持つた女性が妻子のもとを去つた右男性と同棲するに至つた結果,その子が日常生活において父親から愛情を注がれ,その監護,教育を受けることができなくなつたとしても,その女性が害意をもつて父親の子に対する監護等を積極的に阻止するなど特段の事情のない限り,右女性の行為は未成年の子に対して不法行為を構成するものではないと解するのが相当である。けだし,父親がその未成年の子に対し愛情を注ぎ,監護,教育を行うことは,他の女性と同棲するかどうかにかかわりなく,父親自らの意思によつて行うことができるのであるから,他の女性との同棲の結果,未成年の子が事実上父親の愛情,監護,教育を受けることができず,そのため不利益を被ったとしても,そのことと右女性の行為との間には相当因果関係がないものといわなければならないからである。」

元のページ  ../index.html#60

このブックを見る