善管
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1善管注意義務とは,事務処理や物の保存にあたり,「善良な管理者の注意」をもって行わなければならないという義務である。「善良な管理者の注意」は行為基準であり,この基準に従って適法か違法かが判断されるので,当該具体的な取引における「善良な管理者の注意」とは何なのかが問題になる。1序 章 善管注意義務とは/Q1 善管注意義務は,法律上は「善良な管理者の注意」と定められている。 委任契約の規律である民法644条の善管注意義務が有名であり,受任者の行為基準のことであると解される。 換言すれば,民法644条は,当該取引において一般的平均人に要求される注意をもって事務処理を行わなければならないということを定めている。 もっとも,当該取引において一般的平均人に要求されている注意というのがどのようなものなのかは具体的には分かりづらい。当該取引で要求される「善良な管理者の注意」がどのようなものなのかを具体的に判断するにあたっては,当該取引の内容,目的及び性質等が問題になるし,仮に当該取引に関わるガイドライン等が定められていれば,ガイドラインに従って委任事務を行うことが期待されていると考えられ,ガイドライン等が考慮要素となる場合もある。 そして,受任者が特に高度な技術や能力を要求される専門家(例えば,士業や医師)の場合には,より高い程度の注意が要求される。わざわざそのような専門家に取引を委ねたという契約の趣旨からして,通常は専門家としての裁量に期待していると思われるから,当該裁量を前提として,どの程度の注意をすれば「善良な管理者の注意」といえるかが判断されることになる。 善管注意義務とはどのような義務か。解 説序 章善管注意義務とは

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