善管
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⑶ 東京地判平25・7・17(平25レ177号)第1章 委任契約等に基づく善管注意義務90本大震災に遭い,その後,親族の迎えが来なかったため,被告の本部において職員に付き添われて避難生活をしていたが,東日本大震災の約10日後に被告が運営する別の施設に移されて一人で宿泊したところ,その日の夜間に外出して河川で溺水し死亡したことに関し,事務管理に基づく善管注意義務違反が認められた(過失相殺50%)。 「Vは,自らの生命,身体の安全を図るための状況判断ができないのであるから,被告としては,遅くとも平成23年3月23日以降は,上記のとおり本件利用契約に基づく保護義務は消滅したというべきであるものの,Vを事実上の保護下に置いていた管理者(民法697条)として,原告らなど他にVの安全に責任を負うべき者に同人を引き渡すまでは,善管注意義務(同法698条参照)をもってVの保護を継続すべき義務を負っていたというべきである。」「これに対し,被告が同日にVをcの施設に宿泊させたのは,V本人の身体等に対する急迫の危険を免れさせるための緊急事務管理(同法698条)であったから,被告は,これについて悪意又は重大な過失がなければ責任を負わない旨主張する。」「しかしながら,同日時点では,震災の発生から10日以上が経過し,震災直後の混乱が次第に収束しつつある一般的状況にあったと認められ(仙台市内には震災により極めて甚大な被害を受けた地区があるが,Aの本部がそのような被害を受けた地区と同様の被災状況に置かれていたと認めるに足りる証拠はない。),被告においても,V本人の身体等に対する急迫の危険を免れさせるためにVをAの本部からcの施設に移したと認められるような緊急の客観的状況下でなかった」 速やかに土地の賃料の支払をしなかったと主張されたことについて,事務管理者に基づく責任を認めなかった。 「控訴人Y1から同年6月1日付けで金額についての異議が出たことを受け,それから約2週間後の同月14日には,本件相続人らに対して各500万円を支払ったこと」について,「事務管理に基づく善管注意義務に反するほどまでに遅滞したものということはできない」と判示した。判 示結 論判 示

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