93第1節 総 論/Q24コラムされている。)ことになると考えられる。 野村證券損失補填事件(最二小判平12・7・7民集54巻6号1767頁)は,「取締役が右義務に違反し,会社をして右の規定に違反させることとなる行為をしたときには,取締役の右行為が一般規定の定める義務に違反することになるか否かを問うまでもなく,本規定にいう法令に違反する行為をしたときに該当することになるもの」と判示している。また,債権者が期限前弁済を受けたことが問題になった裁判例(東京地判令2・1・20判時2510号26頁)は,「法令遵守義務ないし善管注意義務」として,破産法の「否認権行使の対象となる行為を出ないようにすべき」義務を負っていると判示している。企業法務におけるトラブルに弁護士が巻き込まれる危険性(その1) 当事者間の争いがある中にあえて弁護士が入っていく以上,弁護士が紛争に巻き込まれるリスクは常にあります。 弁護士が紛争に巻き込まれる可能性の高い事件の種類といえば,第一に離婚事件を挙げる方が多いのではないでしょうか。どんな方にとっても,離婚事件というのは自分の人生にとって極めて重要な意味を持ちますし,愛憎の念が激しく入り混じりますから,当然のことといえます。弁護士が殺害されるという痛ましい事件も起こっています。 他方で,離婚事件とかけ離れた事件のように思われる企業法務においても弁護士が紛争に巻き込まれる可能性を常に秘めています。自分の設立した会社を自分の分身のように思っているオーナーも多いですし,人生の全てを賭けてきたという方も多いでしょうから,これもまた当然のことといえます。 そうなると,弁護士が攻撃対象になることもあるわけです。 そのため,弁護士としては,このような事件を行う際には,しっかりとした「リスク管理」を行うことが重要です。最近では,紛争に巻き込まれる「覚悟」もなく弁護士業務を行っているような方も見受けられるので驚きますが,「リスク管理」をしないことは自殺行為のように思います。 例えば,株主代表訴訟が提起された場合,会社の顧問弁護士は,被告となった取締役の代理人になることが許されるでしょうか。 この点について,令和元年に発行された日本弁護士連合会調査室編著『条解弁護士法〔第5版〕』(弘文堂,2019)211頁では,「いずれの見解が妥当であるかは,今後の検討課題である。」と解説されていますが,平成29年に発行された日本弁護士連合会弁護士倫理委員会編著『解説 弁護士職務基本規程〔第3版〕』(日本弁護士連合会,2017)102頁では,「会社に補助参加する途が開けた以上,会社の
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