第2章 役員に関する善管注意義務94 取締役は,会社法355条に基づき,「法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し,株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。」という義務を負っている。これが忠実義務である。 八幡製鉄事件(最大判昭45・6・24民集24巻6号625頁)は,「商法254条ノ2の規定【注:忠実義務】は,同法254条3項民法644条に定める善管義務を敷衍し,かつ一層明確にしたにとどまるのであつて,所論のように,通常の委任関係に伴う善管義務とは別個の,高度な義務を規定したものとは解することができない。」(法令は当時)と解している。 そのため,裁判例上は,善管注意義務と忠実義務は,異なる義務ではないと解される(同質説。なお,信託法などにおいては善管注意義務と忠実義務は異なる条文に定められている)。顧問弁護士は,会社の代理人となるべきであって,取締役の代理人となるべきではないのである。」と断言されています。 要するに,弁護士法違反になるかは別にしても,懲戒事由にはなるわけですから,取締役の代理人となるべきではないのです。 弁護士としては,紛争に巻き込まれないよう,少しでも弱みを見せないことが重要だと思われます。 善管注意義務と忠実義務はどのように捉えられるか。裁判例上は,善管注意義務と忠実義務は,異なる義務ではないと解される。解 説 不作為による善管注意義務違反(主に監視義務違反)を請求できるのはどのような場合か。違法な業務執行を発見することができるような事情が存在し,かつ,取締役がこれを知り得ることができたにもかかわらず調査等を行わなかったような場合に請求できる。2526
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