善管
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1 不作為による善管注意義務違反(監視義務違反を中心として)監視義務とは⑴ 監視義務とは第2章 役 95⑵ 監視義務の具体的内容⑶ 監視義務の要件第1節 総 論/Q26 取締役は,他の取締役に対する監視義務を負っている(支配人や使用人に対する監督義務も負っている)。そのため,取締役が違法行為に直接関与していない場合(不作為の場合)には,取締役の監視義務が問題になる。 最高裁判決(最三小判昭48・5・22民集27巻5号655頁)は,「株式会社の取締役会は会社の業務執行につき監査する地位にあるから,取締役会を構成する取締役は,会社に対し,取締役会に上程された事柄についてだけ監視するにとどまらず,代表取締役の業務執行一般につき,これを監視し,必要があれば,取締役会を自ら招集し,あるいは招集することを求め,取締役会を通じて業務執行が適正に行なわれるようにする職務を有する」と判示して,監視義務を認めている。 そして,このことは名目的取締役でも同様である(最三小判昭55・3・18民集27巻5号655頁)。 監視義務には,具体的には,①調査義務と②是正・阻止義務があると解される(滝澤孝臣監修『取締役の責任』(第一法規,2022)137頁)。農業協同組合の監事に関する最高裁判決(最二小判平21・11・27民集27巻5号655頁)でも,「堆肥センターの建設資金の調達方法について調査,確認する義務があった」と判示されている。 監視義務が認められる要件について,裁判例(東京地判平28・7・14判時2351号69頁)は,「取締役は,代表取締役の違法な業務執行を発見し,又は発見することが可能であったにもかかわらずこれを看過した場合には,監視義務違反の責任を負うが,監視義務も過失責任であるから,取締役の責任が肯定されるためには,当該違法な業務執行を発見することができるような事情が存在し,かつ,取締役がこれを知り得ることが必要であると解する」と判示している。解 説員

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