iはしがき 法律に携わっている方であれば,「善管注意義務」という言葉を聞いたことがない人はいないと思います。 他方で,弁護士であっても,「善管注意義務とは何か」と質問されたときに,的確な回答ができる人はそれほど多くないかもしれません。特に深く勉強しようとも思わせないのが「善管注意義務違反」という概念なのでしょう。弁護士にとっては,「善管注意義務」という概念を持ち出さずともクライアントの希望した結論が得られることが最も良いことですし,予防法務的な観点からすれば,契約書に具体的な義務内容を明示すべきということになると思います。 それでも,「善管注意義務」を持ち出さなければいけない場面はあるはずです。常に具体的な義務内容が書面に残っているとは限りません。 そのときに「善管注意義務」をどのような武器とすれば良いのかが分かるように本書を作成したつもりです。 具体的には,本書一冊で「善管注意義務」が登場するあらゆる場面に対応できるように,業種別・ケース別に裁判例を中心に解説しました。これまで「善管注意義務」に関して出版されている書籍は役員責任に限定したものが多く,「善管注意義務」全般を解説しているものは見当たりませんでしたので,本書一冊で「善管注意義務」に関する論点を幅広く確認していただくことが可能になるように心掛けました。 また,役員責任は年々重くなっており,役員が注視すべきコンプライアンスやガバナンスは急増しています。役員責任についても様々な裁判例が登場していますので,近時の傾向や裁判例に注目しながら解説することで,弁護士,役員及び法務担当者の方の実務に役立つように心掛けました。 「善管注意義務」は,個別具体性の強い法律概念です。一般抽象的はしがき
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