第3章 システム開発・運用等に関する善管注意義務210ます。裁判例は,ニューヨーク支店長に就任した時点で既に発生していた損害については認めませんでしたが,被害総額(約11億ドル)から無断取引及び無断売却による就任後の時点における損害(5億7000万ドル)を控除した金額の賠償責任を認めました。 また,株式を暴力団に売却したのでその取戻しに300億円が必要であるとして脅迫した者に対する金員の供与等が問題になった蛇の目ミシン事件(東京高判平20・4・23金判1292号14頁)も583億6039万8183円の損害賠償を認めています。これは,「300億円の喝取,600億円の債務の肩代わり及び本件方策に基づく債務の肩代わりにより生じた損害で,損害の填補等によってもなお残る損害」です。 さらに,石原産業事件(大阪地判平24・6・29資料版商事法務342号131頁)も,生産・販売を管掌した取締役に対して,合計485億8400万円の損害賠償を認めています。 販売したフェロシルトから土壌環境基準値を上回る六価クロムが検出されたため,フェロシルトの回収費用相当額を認めました。 このように,一旦役員の善管注意義務違反が認められると,高額な損害賠償が認められるおそれがありますから,役員には注意が必要です。
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