善管
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1 善管注意義務(善管保存義務)の内容 民法400条は,契約締結後,特定物を引き渡すまでの間は,「善良な管理者 民法400条は,契約締結後,特定物を引き渡すまでの間は,「善良な管理者の注意をもって」保存しなければならないと規定している。 この特定物に関する保存義務は善管保存義務ともいわれ,その保存義務の程度は,原則として契約における合意によって決定される。 不特定物が毀損した場合には代替品を調達して引き渡す義務があるのに対し,特定物については現状で引き渡すことになるので,引き渡すまでは注意して保存しなければならないという義務が生じることになる。 「善良な管理者の注意」とは,債務者の職業や社会的・経済的な地位などに応じて,取引上,当該の場合に抽象的な平均人として一般に要求される程度の注意のこととされる(遠藤浩編『基本法コンメンタール 債権総論〔第4版新条文対象補訂版〕』(日本評論社,2005)7頁)。 そのため,善管注意義務(善管保存義務)の内容は,抽象的一般的に一律に定まっているものではない。 そのことを明らかにする意味で,令和2(2020)年民法改正によって,「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる」という第1節 総 論第4章 特定物の引渡し第4章211第1節 総 論/Q61 特定物を引き渡すまでの間に負っている善管注意義務(善管保存義務)とは,どのようなものか。引渡しまでの間,「契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして定まる」善管注意義務をもって保存しなければならない。解 説61特定物の引渡しに関する善管注意義務

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