善管
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4 受領遅滞の場合 保存義務を負うのは,「引渡し」の時点までと考えるのが通説である。 保存義務を負うのは,「引渡し」の時点までと考えるのが通説である。 もっとも,「債権者が債務の履行を受けることを拒み,又は受けることが第4章 特定物の引渡しに関する善管注意義務212規定が追加されている。 この規定の解釈については,議論があるところではあるが,概ね善管注意義務(善管保存義務)の内容は,個別具体的な契約内容・契約の目的・契約の性質・契約の締結に至る経緯等に照らして定まることを明らかにしたものであると思われる。 留置権や質権においても,同様に「善良な管理者の注意をもって」占有する義務が規定されていることにも注意が必要である(民298条1項・350条)。2 「特定物の引渡し」とは 特定物の引渡しとは,具体的に特定している物の占有を移転することであ 特定物の引渡しとは,具体的に特定している物の占有を移転することであり,特定物債権は,売買,贈与,交換,賃貸借,使用貸借,寄託,委任,請負,事務管理,不当利得などのいずれからも発生する。 例えば,売買契約を締結しても,引き渡すまでは売主が保有しているのであるから,売主が「善良な管理者の注意」をもって保存しなければならないのは当然のことといえる。 なお,「契約が解除または取り消され,原状回復または不当利得による債権が発生し,それが内容的には受領した特定物を返還権利者に引き渡すべきものであっても,発生した債権の目的自体は,契約の清算に基づく当事者の衡平を図るところにあるから,債権の目的そのものが特定物の引渡しにある場合の規定である本条の適用はない」とされている(前掲・遠藤浩編8頁)。3 「保存」とは 「保存」とは,自然的又は人為的な滅失・損傷から目的物を保護して,そ 「保存」とは,自然的又は人為的な滅失・損傷から目的物を保護して,その物の経済的価値を維持することとされている(前掲・遠藤浩編8頁)。 仮に目的物の価値が増加する場合であっても,改良することは許されない。

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