善管
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第4章 特定物の引渡し213⑵ 質 権第1節 総 論/Q62できない場合」(受領遅滞の場合)は,履行の提供をした時から引渡しまでの間,「自己の財産に対するのと同一の注意をもって」保存すれば足りることになる(民413条)。 留置権者は,自己の利益のために他人の物を占有しており,被担保債権が弁済されれば留置物を返還することになる。そのため,留置物の占有に関して,善管注意義務を負っている(民298条1項)。 質権者は,留置権の条文を準用しているので,善管注意義務を負っている(民350条・298条1項)。 なお,質権設定者は,質権者に対して担保価値維持義務を負っている。最高裁判例(最一小判平18・12・21民集60巻10号3964頁)は,破産管財人が賃貸人との間で未払賃料等に敷金を充当する合意をして質権の設定された敷金返還請求権の発生を阻害したことについて,「質権設定者は,質権者に対し,当該債権の担保価値を維持すべき義務を負い,債権の放棄,免除,相殺,更改等 担保物に関して,どのような場合に善管注意義務に基づく請求をすることができるか。例えば,担保物である手形上の債権の消滅時効更新の措置をとらなかったため時効によって消滅したような場合に請求することができる。解 説5 契約不適合責任との関係 売買契約に関し,特定物の売主は,契約不適合責任(民562条1項本文)を 売買契約に関し,特定物の売主は,契約不適合責任負う。そのため,特定物の売主は,善管注意義務(善管保存義務)を履行していたか否かにかかわらず,引渡し時に,契約内容に適合する目的物を給付しなければならないことになる。1 担保物に関する善管注意義務の内容⑴ 留置権留置権62

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